18:気まぐれに
 それはまさしく襲撃だった。
 朝の和やかな雰囲気に包まれる屯所に突如として響き渡る、怒声。
「近藤さん!」
 ドタドタと廊下を騒がしく歩く足音、つづいてバターン! と勢いよく襖が開けられる喧しい音。
「近藤さん近藤さん近藤さんッ!」
 近藤の部屋を襲撃したのは土方だ。寝癖のついた髪の毛を気にしたふうもなく、ただそのまなざしを鋭く尖らせて、近藤の眠る布団に一直線に向かった。
「ト、トシ!?」
 驚いたのは近藤だ。声を上擦らせて、布団のうえに飛び起きた。
「どうした、トシ」
「どうしたもこうしたも、ねえ」
 そう吐き捨てた土方は顔を歪ませる。
「アンタが俺の知らねェ奴とデートしてたンじゃねーか」
「デートォ!?」
 なにそれいつの話、と身に覚えのない近藤はあわてふためくが、ツンとそっぽを向いた土方の表情は不機嫌そうだ。
「……なァトシ、それって夢をみたってこと?」
「俺はこの目で見た」
「だからそれは夢で」
「だれかと映画観に行ってた」
 行ってないって! 頑固として聞かない土方に近藤は歯痒く思う。
「じゃ、じゃあトシくん、今日いっしょに映画観に行くか」
 そっと提案してみれば、土方はちらとこっちを見ると渋々といったふうにうなずいた。
「そこまで近藤さんが言うんなら行ってやってもいいけど」
 言い終えて土方は、近藤の布団のなかにもぐりこんでくる。
「ト、トシ」
「時間になったら起こしてくれ」
 からだを丸くして目をつむる土方に、なんて気まぐれな奴だと近藤は苦笑しながらふたたび布団にくるまった。


20080320