14:旅行
今度の休日、たまたま休みが重なったので、どこか行きたいところはあるかと突然近藤さんに訊かれた俺は、「景色のいい温泉がいい」だなんていうありきたりな答えをかえすことしかできなかった。
そもそも武装警察という仕事をしていると私用で遠出をするにはなかなかむずかしく、ましてトップの局長・副長が(しかもふたりきりで)、「温泉に行ってくるので江戸を留守にします」といって図々しく実行するのは不可能だ。
だいたい俺は近藤さんにゆっくりしてもらいたかったから温泉に行きたいと言ったのだ。のんびりできる場所へ行けるのなら温泉でなくてもかまわない。休みが重なったのも偶然ではなく俺の作為のうちだった。うえのおえらいさん方の圧力にこたえているだろうと心配したのだった。最近やたらと見合い話が多くなっているような気もするしな!
それなのに近藤さんはいま、俺が安易に「温泉に行きたい」と言ったばかりに(しかも「絶景」というハードルまであげてしまった)うんうんとうなって、「温泉……どっかイイとこあったかなァ」と首をひねって悩んでいる。しまった、俺が悩みの種を増やしてどうするんだ!
「冗談だよ、近藤さん」
俺は腕組みをしている近藤さんの二の腕にふれた。
「近くの銭湯にでも行って、あとはふたりでのんびり過ごしてよう」
突然俺が意見を却下したため、「でも……」と怪訝な顔をする近藤さんに微笑みかける。
「温泉行っても、どうせふたりでいればやることはおなじだろ」
ふたりで遠くに出かけるのは、新婚旅行のときでも遅くはないと思わないか?
20080313