13:おしゃべり
 電話先の声を聞いているうちに、うつらうつらと眠くなってきた。それまで張り詰めていた神経がふわりと解けたようだった。もう数日顔をあわせていない男の声を聞くだけで、ひどく安心させられたので。
 ふいに会話が途切れたとき、受話器の向こうからは静かな呼吸音だけが聞こえてくる。
「近藤さん、なんかしゃべって」
 無言でいるのが居心地が悪いというわけではないけれど、いまは無性に彼の声が聞きたかった。
「ん、なにを?」
「なんでもいい」
「ええー、なんでもいいってのが一番困る……」
 ぶつくさつぶやいていた近藤は、しかしやがてゆっくりとしゃべりだした。土方は布団のなかで丸くなって耳をかたむけ、ぼんやりと相槌を打っていた。時折「トシ?」と怪訝そうに自分の名を呼ぶ声に意識を浮上させながら。
「トシ、眠いんだったらはやく寝たほうが」
「いいから、近藤さん。つづき、はやく」
 近藤も、土方の意図を汲み取ったのかどうかわからないが、ついに土方からの返答がなくなっても、しばらくおしゃべりをやめなかった。


20080311