11:もっと好きになる
もう起きなければと思う反面、まだ布団からでたくないという欲求に負けて行動に移すことをぐずぐずと先延ばしにしている。
布団からでたくないというよりも、この腕のなかから抜けだしてしまうのが惜しいというか。
背後から伸びた太い腕によってからだを拘束されているのに、土方はそれを鬱陶しいと思うばかりか愛しいと感じている。近藤はぐっすり眠っているのだろう。そっと腕にふれてみても、耳元でたてられる規則正しい寝息はかわることなく安らかだ。
(……こういうことをされると)
土方は静かに嘆息した。
こんな、まるで離れるなと言っているような力強さで抱かれていると錯覚してしまうではないか。自分の都合のいいように解釈してしまうのは、けっして愚かなことではないはずだ。
この窮屈さが心地好い。二度寝をしてしまおうかと瞼を落とした土方の背後で、男の起きる気配がした。わずかに緩んだ拘束に、土方の眉は無意識にひそめられた。ああ厭だ。離れてくれるなと心のなかでねだってみた。するとその願いが叶えられたように、ふたたび強く抱きしめられた。思わず口許が緩んでしまうほどに。
「なあトシ、あとどんくらい寝てられる?」
寝起きのしゃがれ声が訊ねてくる。ほんのすこし逡巡した土方は、「あと何十時間でも」と目をつむったままつぶやいた。
20080227