09:追いかけっこ
「近藤さん、アンタまたキャバクラ行ったの」
にっこり微笑む土方をまえに近藤が顔を強張らせた。なぜならその土方の笑顔は笑顔でも目はちっとも笑ってないからである。冷え冷えとしたまなざしが怖い。
「今日一日、俺がアンタの財布預かってる」
土方の手にはいつのまにか見覚えのある財布が握られていた。中身は昨晩のうちにほとんど空っぽになっているが。
「そんなァ……!」
泣き言を漏らすと土方の笑みがいっそう深くなった。むろん目は笑っていない。
「な」
「は、ハイ……」
「使うときは俺に声かけてくれたら返すよ」
そう言って身をひるがえした土方がほくそ笑んでいたのを、近藤は知るよしもなかった。
20080211