08:お泊り
予定していた近藤の出張が、先方の都合により急遽取りやめになった。そのために時間のあいてしまった近藤が、さてどうしようか見廻りにでも行ってくるか、それともパーッと遊びにでも行こうかとうんうんと唸りながら考えている。
そのようすをジッと見つめていた土方は、こほんとひとつ咳払いをしてみせた。
「近藤さん」
「うん?」
「俺にいい考えがある」
そう言って、内緒話をするみたいに声を落とし、
「俺とどっか泊まりに行こう」
ついに言った、と土方はわずかに顔を赤らめながら、それでも平然としたふうを装いつつ近藤を見つめた。
「おまえと?」
「ああ」
「お泊り?」
「……あ、あ」
ひとつずつ確認するように訊かれて、土方はやっぱり言わなければよかった、とほんのすこし後悔した。
「べつに泊まりっていうか、遊びに行くっていうか、時間あるんだったら、たまにはふたりで出かけてみても――」
「そうだな、どっかゆっくり遊びに行こうか」
「ああ、ゆっくり遊びに……って、え」
緩慢にうなずいた土方は、しかし近藤の言葉を復唱するやいなやあわてて顔をあげた。
「ど、どこに?」
「おまえはどっか、行きたいところとかないのか?」
「俺は……」
アンタといっしょならどこでもいいよ。決まりきった文句を言うまえに、土方はわざと迷った顔つきをしてみせた。
20080124