48:泡沫
黄金色の液体のなかで、無数ものちいさな泡が爆ぜている。グラスいっぱいに注いだビールは、まだ空も明るい時間だというのにそんな背徳心さえも一掃してしまうほど、綺麗だった。
客のすくない居酒屋、一番奥のボックス席に近藤は土方と対面していた。近藤は、グラスを持ちあげて「乾杯しよう」と言った。土方が「なにに」とつまらなさそうにぼやく。臍を曲げているのだ。土方の誘いに近藤が冷淡に突き放した、あの夜から。
あれには理由があるのだ。だが、それは口にだして言えるものではない。だから近藤は、罪のない部下たちに不機嫌さをぶつけている土方を誘ったのだ。
「えーと、これからの真選組の反映を祈って、とか?」
「つまんねェ」
なおも不機嫌な面のまま、土方がぴしゃりとはねのける。近藤は、そんな冷たい反応に負けじと、
「じゃあ、これからの俺たちに乾杯! とか?」
「……寒い」
あいかわらずつれない言葉だが、それまで強張っていた頬がわずかだが緩んだように見えた気がして、近藤もつられて微笑した。土方の持つグラスになかば強引にグラスをぶつけると、金属音がかき鳴らされた。
「トシ、遠慮しないで飲めよ。俺の奢りだから」
「あたりまえ」
土方はこっくりとうなずいて、ビールをひと口飲んだ。唇についた泡を近藤が指先ですくいとって舐めると、真っ赤にした顔をふたたび強張らせてしまったけれど。
20071107