45:彼岸花
あぜ道に花が咲いている。放射状に花弁のついた、赤い花だ。道沿いにずっと、遥か前方まで群生していた。
それを目ざとく見つけた近藤が、「トシ、あれはなんの花だ」と訊ねてくる。曼珠沙華だ、と土方は答えた。ほかにも多々呼び名はあるが、彼岸花や死人花、幽霊花などどれも不吉な連想をさせるものばかりだ。
だから土方は、告げられた近藤の提案に眉をひそめた。
「お土産に摘んでいこうか?」
「やめとけ。屯所が火事になる」
「へっ?」
彼岸花を家に持って帰ると家が火事になる――。そんなものは俗信でしかなかったが、近藤は土方の言葉を聞くやいなや、「火事か……、それは困るな」と神妙な顔をしてうなずいて、持ち帰るのは諦めたようだった。
「にしても、花火みたいな花だな」
そう思わないか? 同意を促され、土方は返答に窮した。
――そう言われてみればそう見えるかもしれない。
土方は歩きだす近藤のあとについていきながら、それまでとは変わった視点で真っ赤に咲き誇る彼岸花を眺めた。
20071104