42:愛しておくれよ
初めて結ばれた日の翌朝、相手に「昨晩のことは忘れてくれ」と言われた。あまりに衝撃的だったので、近藤はしばし呼吸をするのも忘れたほどだった。
なにかしくじってしまったのだろうか。思い出そうとしても、思考がうまく働いてくれないのでなにも考えられなかった。
そんな近藤が冷静を取り戻したのは、耳まで赤くしながら、枕に顔をうずめている土方に気づいてからだった。
なにか、ようすがおかしい。その態度と、突然つきつけてきた「忘れろ」という台詞は、あまりにも不釣合いだった。
「トシ……?」
呼びかけると、ぴくりとかすかな反応をみせた土方が、視線をさまよわせながらおもむろに口を開いた。
「アンタだけ、だからな」
「なに、が」
「俺の……あんな姿、みせるの」
そこでようやく近藤は合点がいった。土方の言う「忘れろ」とは、セックス自体ではなく行為中の彼の姿のことだったのだ。
「だから、誤解すんなよ……」
声や表情、動作など――まさか忘れるわけがないし、もったいなくて忘れられるわけがない!
「だって俺、アンタにたくさん愛されてうれしい」
だからもっと愛してくれよ。甘くねだられてしまえば、それにこたえるほかないだろう。
20071028