41:忘れたい 忘れない
見つめられている。
土方はそのまっすぐな視線に気づくと、ますます顔をあげられなくなった。視線の向けられている皮膚が、ちりちりと痺れるように熱くなってくる。
逃げたくても、逃げられない。
ろくに身動きできないのだ。昨晩の己の痴態が、恨めしい。彼と初めてからだをつなげた痕跡が、いまでもあちこちに残されている。消えはしない。近藤のぬくもりや己の名前を呼ぶ声、仕草などすべて、忘れるなんてできない。
「近藤さん……、昨日のことだけど」
おそるおそる土方は口を開いた。かすれた声を恥じ、咳払いでごまかしたあと、
「忘れてくれないかな」
そうつづけて近藤を見上げると、その表情がわずかにこわばったのがわかった。
「それはつまり、昨日のことはなかったことにするということか」
ひやりとする。ああ、そういうことではないのに!
「ちがう、俺のこと……」
「トシを?」
「だから……」
なんてもどかしい! 土方はうつむき、くちびるを噛みしめた。だってまさか言えやしない。忘れてほしいのはセックスじゃない。自分が出した女みたいな声だとか、いやらしい体勢だとか――。だなんて!
20071025