39:すべてが。初めてだった
 近藤の傷の手当てをしてやりながら、土方は漠然とした惧れを内心で抱いていた。じわりじわりと滲み出てくるその惧れ――醜い感情を抑えるのに必死だった。
 はやく、己の目の届かぬところへ……。
 女がこしらえた、近藤の腫れた頬を綿布ですぐに覆ってしまわなければ……。
 でなければ、己がこの仕打ちをしてしまうかもしれない。己を見失い、泣き喚くといった無様な姿を近藤に見せるのは御免だった。
 この身をすべて焼き尽くすような醜い愛情は、この男がいなければ一生知らなかったにちがいない。
 土方は震える両の手のひらで近藤の頬をやさしくはさみこみ、接吻けをねだるよう、瞳を閉じた。


20071025