38:最終兵器彼女
――しまった。
近藤は己の愚かさに内心で舌打ちした。近藤の腫れた頬を見て、土方が顔色を瞬時にかえたのだった。
女に殴られた頬を隠すよう、手のひらで熱のもった皮膚を覆い、「なんでもないよ」と先回りをして言ってはみたものの、その台詞にはなんの効果もないことは、知っている。
怒られるだろうか、と一瞬思ったが、予想に反して土方は何も言わず、ぷいと身をひるがえして部屋を出て行ってしまった。
ひとり残された部屋で、近藤は「あらァ」とおどけるようにつぶやいた。すると口内にできた傷がしみて、しかめ面が浮かんだ。
わずかに血の味がするのがひどく不快で、まずは口をすすいでこようかなとあぐらを解いた矢先、ぴしゃりと障子が開いて先ほど出て行った土方がふたたび姿を現した。後ろ手に救急箱を持っている。中腰のまま動きを止めている近藤を一瞥し、そこに座れ、と目で制した。近藤はおとなしく座布団のうえに尻を置いて、またあぐらをかいた。
まったく、こいつにはかなわないなァ。
手当てをされながら、ふと苦笑じみた笑いがこぼれてしまった。それを見咎めるかのように土方の眉根が寄って、患部にあてた綿布をぴしゃりと叩かれてしまった近藤は、口許を綻ばせながら「痛ェ!」と悲鳴をあげた。
20071024