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じっと見つめる視線の先、煙草をくわえた男が困惑した表情を浮かべて振り向いた。
「……なんか、用」
「いや、べつに」
端的にこたえると、土方はおもしろくないといったふうに煙を吐きだした。目許が、わずかに赤い。自分でも、気づいてはいないのだろうけれど。
近藤は、すっかり手になじんだ土方の黒髪を、手のひらでくしゃくしゃとかきまわした。わ、だとか、ア、だとか声をあげる土方に思わず笑みが零れる。
「俺もおまえとけっこう長いあいだいっしょにいるけど、おまえのこと、ずーっと見ててもぜんぜん飽きねェなあと思って」
髪を乱し、あんぐりと口を開けた男の口許から、ぽろりと煙草が地面に落ちた。
「あ、飽きられてたまる、か……ッ」
むろん言葉の綾である。だが、なんとも不愉快そうに――顔を真っ赤にして――反論する土方がおかしくて、近藤はふたたび土方の髪の毛をかき混ぜた。
20071020