35:彼の温度
 たまったもんじゃねェな。
 土方は、今夜もう何度目になるかわからないため息をこっそりと吐きだした。身じろぎすらままならないこの体勢は、己のからだを拘束するたくましい腕によって強いられている。
 布団のなかで、密着状態。
 なのに、これっぽっちも色気は見当たらない。――そもそも、男同士であるのに色気を求めること自体まちがっているのかもしれないが。
 土方はそっと顔を持ち上げて、静かな寝息をたてて眠る近藤を恨めしげに見やった。
(すげーよく寝てる)
 それはもう、ぐっすりと。一睡もできない土方を置いてきぼりにして、近藤はすやすやと夢のなか。
(俺は抱き枕か)
 心中で悪態をついてやる。だいたい、「いっしょに寝ようか」と言われたら期待してしまうのはしかたのないことだろう。――いや、俺だけなのか……? 自問自答して土方は、いやちがうみんなそう思うに決まってる、とちっとも頼りにならない確信を胸に抱き、下唇を噛みしめた。
 ――抱き枕。それでもいいかもしれないと思ってしまうあたり、俺もどうかしていると土方は苦笑した。視線の先にある近藤のくちびるにわずかにふれるだけのキスをして、その己の行為をひどく恥じたようにあわてて瞼を強く閉ざした。
 近藤の、ほんのすこし自分よりも高い体温はあまりに心地好く、緊張に身を強張らせていた土方が眠りにつくのも時間の問題だった。


20071020