22:嘘吐き
「俺実は好きなひとがいるんだ」
土方を抱きしめながら近藤はそう告白した。腕のなかのからだが硬直するのが布越しに伝わってきて、思わず口許に微笑を刻ませる。
「……知ってる」
ため息とともに土方の口からつぶやきが零れ落ちた。それを聞いた近藤の心臓は一瞬だけ跳ね上がった。
「あの女だろう……」
伏せた瞼を覆う睫毛が微かに揺れた。近藤は胸のうちで安堵する。強張らせた顔をゆるりと和らげる。
ちがう、という近藤の言葉を待っているのだろうか。それとも、ほんとうにそう思っているのだろうか……。土方の心情は近藤には計りかねたが、ここで己の心中を吐露するのは気が引けた。
近藤はなにも応えはせず、ひそめられた眉間にやさしく唇を押し当てた。
20070826