17:いなくなったのは秋だった
 ときたま屯所に迷い込んでくる猫がいた。週に二三日、見かければ餌をやる程度のものだった。それが、気づけばしばらく姿を見せていないのだ。
 とりわけ可愛がっていた近藤は、ひどく意気消沈としていた。なにかあったのだろうかと、しばし気を削がれている。それはもう、見ていて気の毒なほどだった。
「そのうちまたひょっこり現れるだろ」
 得てして真実味のない言葉だ。なんの根拠もないのに、よく言う……。
 土方はしょげる近藤の背中を叩き、密かに自嘲した。
(俺はアンタのそばから離れたりしねえよ)
 だから――。
 俺だけを――。
 喉許まで出かかった言葉を、煙草の煙とともに飲み込んだ。


20070813