16:夏の終わり
 押入れの奥から花火が出てきた。いつ買ったのか、近藤は憶えていなかった。それくらい古いものかもしれないが、まだちゃんと楽しめるだろうか。棄てるにはもったいない量である。
 袋を抱えて部屋を出ると、縁側には先客がいた。紫煙を燻らせている土方だ。
「お、ちょうどよかった」
 近藤は花火の束を土方に見せ、「いっしょにやらないか」と誘った。
「俺?」
「ああ、ほらちょうどライターもあるし」
「俺は火付け役かよ」
 土方は鼻白んだ表情を浮かべたが、すぐに煙草を灰皿に押しつけると「水持ってくる」と言って立ちあがった。
 なんだ、結構やる気じゃないかと近藤は微苦笑してそれを見送り、縁側に腰を下ろした。
 最近では夜になるとだいぶ涼しくなってきた。きっと今年の花火はこれで最後になるだろう。
 しけっていなければいいが――。
 近藤は袋から取り出した花火を板敷きのうえに並べながら、土方が戻ってくるのを待ち侘びた。


20070812