15:春を待つ人
はやくあのひとに会いたいな、と土方は思う。
薄着で縁側に座し、とうに短くなった煙草を、そうとは気づかずにくわえていた。明け方から降り出した雪が、庭にうっすらと積もっている。
(――雪のせいで)
止む気配を窺わせない雪が交通機関を麻痺させ、出張に出かけた近藤を足止めして屯所への帰邸を遅らせた。本来ならば今夜の夕餉は近藤とともに囲えるはずだったのに、明日へと先延ばしになってしまったのだ。
(ああ、憎い憎い憎い)
降り止まぬ雪をきつい双眸で見据えていた土方は、ようやく薄い唇にほんのり熱さを感じ、煙草をつまんで真っ白い世界へとぞんざいに棄てやった。
20070729