14:切り裂きジャックを待ちながら
無残に切り刻まれた死体を見下ろしながら、さて困ったなと近藤はこめかみをかいた。
事切れたそれは、無数の切り傷により顔の判別ができなくなっている。これでは身元を確認するのに大層骨が折れるだろう。
この骸をつくった張本人――土方の表情を失った顔にはどす黒い赤色がこびりついている。キッと足許を睨みつけているようでいて、焦点は合っていないように近藤には見えた。
近藤は深く息を吸い込んでから、つたない所作で土方の頬に指をすべらせた。は、と土方が息を飲み込み近藤を見上げた。ようやく焦点の合った双眸に近藤はわずかに笑んで見せた。
「はやく帰ろう」
血のついた指を握りしめて、近藤は土方の背中をそっと押した。
20070726