09:Dolls
肌にまとわりつくような風が吹いている。
土方は細く息を吐き出しながら、べっとりと血糊のついた刀をひと振りした。足許に点々と血痕が散らばるのを見下ろし、それを無碍に踏みつけた。
斃れる直前、男が遺した言葉を反芻する。
――幕府の狗が……。
土方は、くちびるを歪めて笑った。
「違ェな」
刀を鞘に納める。ちん、と心地好い音が響いた。
「俺は上がどうなろうがどうでもイイのよ。ただ……」
あのひとを護るために刀を振るってェことに快感を覚えちまッてからは……。
うっとりと双眸を細めた土方は、地に伏した死屍には目をくれずに踵を返した。表情をなくした皮膚を、冷たい風が撫でつけていった。
20070630