05:人間失格
 土方は近藤のことが好きだった。
 真選組の局長として隊士を引っ張っていく姿は男の自分から見ても惹かれるし、また底抜けのおひとよしっぷりは自分ではとうてい真似できるものではなく、畏敬の念すら抱いていた。
 それがちがう種類の想いへとかわっていったのはいつからだったろう。
「ごめんな、近藤さん」
 ふとつぶやくと、近藤が「え、なにが」と目を瞠った。
「なんかあった?」
「……なんも」
 なにもあってはならない、と土方は思い巡らす。 いまのままで充分だ。そう思う反面、物足りないと思うのも事実だった。
 こんな想いを抱いたまま彼のそばにいていいのか。
 不安に駆られることもたびたびあったが、はっきりとした答えは見出せぬまま、彼のそばにいたいのだという己の欲に従ってずるずると現状を維持しているのだった。
 それでも近藤がときおり口にする、自分を必要としてくれるという言葉は何より土方を前向きにしてくれた。
 だから土方はひとを斬る。人情の欠片もないぞんざいさと刀を操る確かな腕を見せつけながら。
 鬼の副長たる所以はすべてひとりの男のためだけに存在するのである。


20070607