04:あなたのようになりたかった
「トシって整った顔してるよなー」
なんてことはない一言のはずだった。
まさか爆弾発言をしたとは露知らず、近藤は硬直した土方の頬へ手を伸ばした。
だが、ふれる瞬間に土方がするりと後ずさってしまったので、空振りした手を宙に浮かせたまま、怪訝そうに目を眇める。
「なんで逃げるの」
「アンタはおかしい」
土方が苦々しく吐き捨てた。
褒めたのに、なぜそのような言いぐさをされなければならないのか。意味がわからないといったふうに、近藤は首をかしげた。
「照れてンの?」
「ばか、ちがう」
そうじゃなくて、とつづける土方の顔は確かに赤くなっていた。しかし近藤はそれ以上言及することはせず、「ふうん」とうなずいてみせた。
土方は、それでこのやり取りが終わったのだと思ったのだろう、安堵したようにちいさく息を吐き出した。
空気がわずかに揺らぐ。
その隙を狙っていたみたいに、近藤の手が土方の頬にかすめるようにふれた。ほんのすこし、人差し指の先端だけだ。
見開いた双眸に、「隙あり」と声をあげて笑った近藤だったが、先刻よりも赤く染まった顔をすぐに俯けてしまった土方を見て焦った。
「トシ、ごめ」
「近藤さん」
顔は伏せたままだが、有無を言わさぬ口調だ。
「俺はアンタがうらやましいよ」
「え、なにが」
「……なんでもねェ」
そう言ったきり黙り込んでしまった、つっと尖ったくちびるに近藤はまた無性にふれてみたい衝動に駆られた。
20070531/20080421