02:叶わない恋
 言おうか言うまいか。
 二者択一を迫られた際に俺が出した結論は、一寸の迷いもなく後者のほうであった。
 つまり、秘し隠しにしてきた感情を、それまでと同様心の奥底に秘めておくこと――それこそ頑丈な鍵でもかけておくかのように――を選んだのだ。
 だが、己で頑丈だと思い込んでいた鍵は意外と脆かったらしく、ふとした瞬間にその秘めておくべき感情が表に溢れ出てしまいそうになる。
 たとえば、はやくイイひとを見つけろと急きたてられたとき。
 俺だってそうしたいのはやまやまなんだが、それを邪魔してくれるのはおまえなんだぞなんて、とてもじゃないが言えやしねェ。
「俺だって、一生懸命探してるんですー」
 かろうじて、体面を保とうと言葉を見つけ出す。だが、それを聞いたトシは、いらだたしそうに煙草を灰皿に押しつけ煙とともに正論を吐き出した。
「別に、一生懸命探すモンじゃねえだろ」
 うん、それは重々承知しています。
「でもなァ、トシ」
「なんだよ」
「だってなー」
 続く言葉を濁してかわりとなるものを必死に考えてみるが、おいそれと思いつくものではない。
 だって。
(ヨメ探しをするよりも、おまえの不機嫌そうな顔を眺めているほうが愉しいだなんてとてもじゃないが)
 そうしてついに、黙り込んでしまう。
 口を噤んだまま見つめていた先、伏せられていた睫毛が持ち上がり、その奥から切れ長の瞳が俺を捉えた。
「……だって、なに」
 無意識に、伸べそうになった指先で自分の顎先を引っかいて、なんでもないと笑ってみせるのがいまの俺にできる精一杯のことだった。


20070517