01:ずっと君が好きだった
また振られちまったんだと力なく笑う近藤さんを前にして、俺は肩をすくめてみせることしかできなかった。
こんなこと、慣れている。
近藤さんも、そして俺だって。
だから、いちいち傷つくのは馬鹿げていた。笑ってこたえるのは、さすがにまだできやしねェけど。
「アンタもいいかげん、ひとりに決めたらいいのに」
つい声に出してしまったのは、本音と嘘が半々になった言葉だ。
このひとが決めてくれたのなら俺だって腹をくくって諦められる。
だが、そんな簡単に諦められるほど生易しい感情じゃないってことは、俺が一番に知っていた。
ウジウジしているのは性に合わねェ、だからといって大っぴらにできる想いではないってことも、もちろん厭っていうほど知っている。
すべては時間が解決してくれるのだと、無理やりにでも思っていないとやりきれない。
くわえた煙草がなんだかいつも以上に苦く感じられた。思わず、顔をしかめてしまうぐらいに。
「俺は」
ふと、それまで豪快に酒を呷っていた近藤さんがぽつりと呟く。
「俺はもうずいぶん前に諦めたんだよ」
低く落ち着いた声色に、わずかに自嘲が混じっているのが聞き取れた。
なにを、と問い返すことは俺にはできなかった。
ひどく重要なことを聞かされたような気がしたが、こんなときに限って脳がしっかり働いてくれない。
口をぽかんと開けて、アホ面をさらしているのだって不本意なことだ。
「なあトシ」
揺蕩う煙が目にしみて、俺は近藤さんのまっすぐな視線を受けながら目を瞬かせた。
(……なんで)
アンタがはやく次の女を見つけてさっさと結婚しちまえば俺だってアンタのことなんかすっぱり諦めてやるのに、どうして。
(なんでそんな顔をして俺を見る)
20070508