俺、すげー好きなヤツがいるんだけどよ。でもそいつ、鈍感で、俺の気持ちなんざちーっともわかってねェんだよな。 みんなに、バカみてーにやさしいから、だから俺だけ特別ってわけじゃねェのは、自分でもよくわかってるけど。でもよォ、やさしくされっと、どうしても。
 まるで酔っ払いのたわごとのような相談事に、坂田はすっかり辟易していた。 それでも我慢しているのは「奢り」という言葉に惹かれたからにほかならない。
 特大チョコレートパフェをむさぼりながら土方の話を聞き流していると、テメェ聞いてンのかと不機嫌な声で尋ねられたので、ああ聞いてるさとクリームを舐めながら緩慢に頷いた。
「つまりはおまえ、自分とこの大将に惚れちまってどーしようもねえって言いたいんだろ」
「な……ッ、俺は近藤さんが好きだなんて一言も言ってねえぞ!」
 顔を真っ赤にしてそんなことを言われてもまったく説得力はないのだが、土方は憤懣やるかたないといった調子でマヨネーズのかかった何かを頬張る。 その「何か」を直視してしまうとせっかくのパフェの味が台無しになってしまいそうなので、坂田はパフェをつつくのに集中した。
「てかなんで俺がおまえらの与太話を聞かなくちゃなんねーのかな」
「こんな話、うちの奴らに言えるかってんだ」
「だよなァ、上司ふたりが恋仲になっちまいましたなんて知ったら、部下たち泣くぜ、ぜってー」
「……は?」
 いやまァ俺は甘いモン食わせてくれるのならこんくらいの話いつでも聞きますけど。 坂田は半分ほどなくなったパフェをつついてバニラ味のアイスクリームを愉しんでいた。 しっかし、なんでそういうこと本人に言わねえのかねェ、イイ歳した大人がうじうじ恋沙汰で悩むなんざだらしねえ。 おい、ちょっと待て。いや俺は甘いモン二倍食えるからいいんだけどね。ちょっと待てって、どういう意味だよおい。
「今日二度目なんだよなァ、俺、パフェ食うの。」
 鈍いのはどっちだよと容器についたクリームを惜しむようにスプーンですくう。見る間に土方の顔色が変わっていった。 へェ、おまえあいつよりは鈍感じゃねえのか。坂田はにやりとクリームのついた口角をあげた。
「近藤さんに会ったのか」
「さっき。でもチョコパフェじゃなくてイチゴパフェだっ」
「はやく言えよそういうことは……ッ!」
 土方はマヨネーズのかかった何かをたっぷり残してどたばたとあわただしく店を出て行った。どーしょうもねェ、青い奴ら。 スプーンをくわえてふんと鼻を鳴らす。しかし今日は得した気分だ。 腹いっぱいになって満足気にあくびを漏らした坂田は、重要なことに気がついて顔を青褪めさせた。
「あっ、おい、ちょっと待て! 金! 金だけは置いてけ!」
 これじゃ約束がちがうじゃん!  追いかけようとしたところでにっこり作り笑顔を浮かべたウエイトレスに肩をつかまれた。 畜生もう相談なんざ乗ってやんねェからなと仕方なく軽い財布を懐から出す。
「すいません、領収書。真選組あてで」


シーソーゲームのような、


title by 24番目のネジ[http://24th.chakin.com]
好き、5題/きっともうどうしようもない
20061209