「――あ」
突然立ち止まった近藤を、土方は訝しみながら振り返った。
「どうしたんだ」
「ああ、なんか……」
そう言って、近藤が一歩踏み出してくる。正面で歩みを止め、ジッと見下ろしてくる近藤に土方は固唾を飲む。
「な、なんだよ」
くらくらと眩暈を感じ、思わず半歩下がると腕を捕らえられ、おもむろに近藤の鼻先が髪の毛にうずめられた。
「こ……ッ」
「んー」
「なに、やって……!?」
あわてて近藤の胸板を押しやって、いったい何事かと喚けば近藤はひとり晴れやかな顔で、
「なんかいいにおいがしたから、トシなのかなーって」
「……は、あ?」
匂いだって? 土方はくすんと鼻を鳴らし、空気を吸い込んでみると確かに甘い匂いがどこからか漂ってくるのに気づく。
どこかで嗅いだことのある香りだと思案して、すぐに思い当たった。
「金木犀だ」
「え?」
「どっかの庭先にでも咲いてんじゃねェの」
まったく勘違いも甚だしい。呆れた振りをして歩き出した土方は、ふたたび腕を引っ張られたのでよろけて近藤の身体に倒れ込んでしまった。
「こ、んどうさ」
「そうだな、おまえのにおいは煙草のにおいも混じってるし」
俺は間違えないよとつむじにキスを落とした近藤は、呆然と立ち尽くす土方を追い去って行ってしまう。
(……つまり)
先ほどのあれはもしかしてわざとだったのか。近藤はわかっていてあんなことを……。
必死に思考を巡らす土方の邪魔をするのは、身体にまとわりついた、あまい匂い。
まるで抱きしめられているみたいだ、
title by 24番目のネジ[http://24th.chakin.com]
好き、5題/通り過ぎる瞬間にほら
20061009