「これ、トシくんにやるな」
プレゼント、そう言って差し出されたのは、プレゼントとは到底言いがたい、リボンのひとつすら結ばれていない透明のビニル袋だった。
それだから、中身はむろん、見えている。
突然目の前に突き出されたものを見やって、土方が言葉を失ったのも無理はないことだった。
「……なにこれ」
「なにって、猫耳」
「……じゃ、なくて」
自然と顔が引きつっていく。近藤がさらりと吐き出した言葉に、さらに土方の顔は強張った。
洒落っ気のないビニル袋のなかに見えるのは、ふわふわの黒い毛で覆われた獣の耳のようだった。近藤曰く、「猫耳」だそうだ。
けれども――。
「じゃなくて、なんで俺に、こんなモン」
「え、いやだった?」
「あたりまえだろ、誰がこんなモンもらって」
顔をゆがめ、受け取ったプレゼントを押しやろうとする土方の手が、ふいに止まった。近藤の顔が、あまりにも残念そうだったからだ。
(まさかコレを受け取って、ほんとうに俺が喜ぶだなんて思ってなかっただろうな)
土方は、訝しげに近藤を見つめる。近藤はといえば、すっかり意気消沈してしまったのか広い肩をがっくりと落としていた。
このようすだと、土方の疑念は図らずもあたってしまったことになる。
急に黙りこくってしまった近藤を前に、しばし思案にくれていた土方は、コホンとひとつ咳払いをした。
「……まア、せっかくだからもらっておく」
言うが早いが、近藤の顔が、嘘みたいに晴れやかになっていく。
「おお! ぜってートシに似合うと思ってたんだ。おまえが喜んでくれて俺も嬉しい!」
「いや」
誰も喜んだ覚えはなかったけれど、このひとの、嬉しそうな顔をわざわざ消してしまうのももったいないので、それ以上の弁解はやめておいた。
「ありがとな、近藤さん」
「お、さっそく今夜つけてみてな!」
「ん。……んん?」
きっとその笑顔には逆らえないだろうけれど。
20070505