「トシくん、風呂から出たら何か着ようよ」
あやうく吹きかけた茶を喉に流し込んでから、近藤は部屋へと入ってきた裸体に乾いた笑いを漏らした。
目のやり場に困り、さり気なく湯飲みを持つ手元に視線を落とすと、何を今さら、と頭上から呆れた声が降ってくる。
「どうせ脱ぐんだ、必要ねえだろ」
「いやでもね」
冬だから風邪ひくでしょ。言いながら顔を上げると、わずかに赤みのさした色艶のよい肌が目に入り、あわてて顔を逸らす。
「あーあー……もうダメ、全然ダメ」
「何が」
大袈裟にかぶりを振る。色気がねえよ、そんなんじゃ。なにアンタ、もしかしてチラリズムとか、好きなの。
そうそう、見えそうで見えない、そうやって胸をときめかせるのが男のロマンっていうモンじゃねえのかな!
拳を握りしめて熱弁を振るえば、ふん、と土方がつまらなさそうに鼻を鳴らした。
「いつもはイヤだって言ってもじっくり見てくるくせに……」
とうとう近藤は茶を吹いて、着物の懐を濡らしてしまった。
「トシ……ッ」
「アンタも脱ぐしかねーな」
あーあ、と呆れ顔で肩をすくめた土方の瞳が、喜悦に輝いていたのは、おそらく近藤の見間違いではないだろう。
目を逸らすな、それが現実。
title by 24番目のネジ[http://24th.chakin.com]
冬、5題/肌を隠す
20070105