「愚痴付き合ってくれたお礼に、夕飯奢ってやるな」
(無理やり聞かせてたンじゃねえかよ)
なんだか納得がいかないけれど、とりあえず今日の夕飯には難なくありつけるということだ。
それならばありがたく頂戴することにしよう。
先を歩く男の数メートル後ろをついていくと、数歩行くたびに男が振り向く。
まるで自分がちゃんとついてきているかいちいち確認しているかのようで、それがなんとなく黒猫にはくすぐったく思えた。
着いた先は大きな屋敷だった。むさ苦しい男の集団に、自分をここまで誘導してきた男は迎えられた。
皆一様に彼の名と思しき名前を呼んでいるので、そこで黒猫は初めて男の名を知った。
「あれ近藤さん、そいつ、なんです」
板張りの廊下を進んでいるとき、男の前に進み出た者がいた。
他の者とは一線を引く空気をまとっているのを感じ取ることができた。
「ああ、俺の友達だ!」
「友達ィ?」
優男の目がきらりと光った気がして、思わず黒猫は男の影へと隠れた。
「ふうん、近藤さんには慣れてるンですね」
「ハハッ、そうかァ」
(別に)
そんなんじゃない。ただ飯を食わせてくれるというから、わざわざついてきてやっただけだ。
黒猫は金髪の少年をキッと睨みつけ、夕餉の香りの漂うほうへと走っていった。