100:ここでキスして
「俺はアンタの傍にいられるだけでいいって思ってたけど、どうやらちがったみてェ。どんどん欲張りになっていった。アンタが思っている以上に俺は汚い人間なんだよ。俺、アンタが傷つけられるのを見るの、すんげーいやだ。苦しくなる。だったら俺がアンタの身代わりになったほうが何倍もマシ。なァ、俺はもう、無茶は言わねェよ。だからさ、一個だけ、さいごに、一個だけ俺の言うこと、聞いてくんねえかな。さいごに、さいご、だから」
 喉の奥から絞り出されたかすれた声は横たわる近藤の耳に届くことはない。土方は一度くちびるを噛みしめて、それから近藤のほうへ身を乗り出した。ほんの一瞬、触れるだけの接吻けをした。重なったくちびるは、少しだけつめたかった。


06.11.30