099:夢の底から
瞼の裏にまぶしい太陽の光が射し込んでいるのを感じ、否応なしに夢の底から引き戻された。
(――いやだ、もっと眠っていたいのに)
安寧に満ちた夢を見たときに、そう願ってしまうのは一度や二度ではない。
土方は、おそるおそる瞼を開けた。朝日に目を眇め、ぼやける視界のなかに大きな背中を映りこませる。
近藤はすでに起きていた。こちらに背中を向けて、どうやら床に広げた新聞を読んでいるらしい。土方が目を覚ましたことにいまだ気づいていない様子で静かに新聞をめくっている。
微かな紙面をこすり合わさる音に紛れて、土方は胡乱につぶやいた。
「……これも夢、か」
幸せな、夢の続きなのかもしれないと半ば夢見心地のまま背中を眺める。
(だったら)
そうであるのなら、このあたたかい空気のなかにいられるのならば、もう二度と眠りから覚めなくてもいいと、土方はくしゃくしゃになったシーツを握りしめて瞼を閉じた。
06.11.30