092:キャンディ
「トシ、お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ」
 ご丁寧に、さほど縁があるとはいえない行事に則るイイ年した男に、土方は思わず苦笑をこぼした。これくらい、予想はついていた。ポケットに手を突っ込み、前もって用意していた飴玉を近藤の前へと差し出す。
「ほら」
「エッ……」
「なんだよ、菓子が欲しかったんじゃねェのか?」
 手のひらにころりと転がる飴玉を見下ろし、近藤が目を丸くするのにわざとらしく首をかしげてみせる。
「いや、ほらトシくん、あるじゃん、いろいろ、さ……」
 しどろもどろになりながら、「うん、まァ言ったけど……」とひとりごちた近藤は、キャンディの包みを解いて飴玉を口の中に放り込んだ。
「それで、充分?」
「へ?」
「アンタにだったら俺、いつでもイタズラされてもいいンだけど」
 なにを今さら言わせんの。


06.10.31