091:痕跡
土方は感慨深げに点々と赤痣のついた自身の胸元を見下ろしていた。
「どうしたんだ、トシ」
「ん」
緩む頬を抑えて顔を上げた土方だったが、着替えの最中である近藤の姿を認めてそっと眉間に皺を寄せた。その表情のまま、まじまじと見つめていると、近藤が狼狽えるように「え、どうしたの」と服を着る手を止める。
「……近藤さん」
「うん? ……ってトシくん、ちょっと!」
一糸纏わぬ裸体のまま立ち上がると、近藤はぎょっとしたふうに目を見開く。何を今さら、と呆れる反面、そんな新鮮な反応が見れることも楽しんでいる土方は、身を固まらせる近藤の首筋にくちびるを寄せた。そうして音をたてて吸いつく。いったん離れて、鎖骨のあたりにも、何度も何度も。
自分の胸元に残る、痕跡と同じものを近藤のからだに刻みつけた。
「アンタに俺のものっていうしるし、つけたかっただけ」
艶然と微笑んだ土方だったが、近藤が紡いだ言葉に声を失うことになる。
「でもトシ、背中にたくさん」
ほら、と振り向いた近藤の背中には、己がつけたのだろう爪痕がこれでもかというほど残されていたので。
06.11.30