こうやって待つ時間も案外楽しいものなんだと、土方は冷たいコンクリート塀に背中を預けながらふと思った。
銭湯の入り口で、男湯に向かう近藤と別れたのはほんの数十分前のことだ。約束の時間まで、あと五分。あのひとを待たせるのはなんだか忍びなくて、急いで身体を洗い出てきたのだ。
秋は更け、夜になればぐんと気温は下がる。せっかく温まった身体も、わずかに身震いしてしまうくらいに冷えてしまった。
まだかな、とひとが出入りするたびに男湯に目が行ってしまい、ひとり苦笑を禁じえない。足元に視線を落とし、ちいさく息を吐き出したところで不意に視界がかげった。
「お待たせ」
「……近藤さん」
「待ったか?」
ほくほくと、近くに立っているだけで熱が伝わってきそうなほど、近藤は温かい熱気をまとっていた。風呂上りの近藤に見とれつつ、土方は待ってないとかぶりを振る。はやいな、とおもむろに無骨な手が頬に触れた瞬間、近藤の顔色が曇った。
「冷めてんじゃねえか」
「平気だよ。おれ、もとから体温低いし」
「でも」
「だったらはやく帰って、アンタがあっためて」
な? と小首をかしげてみせると近藤は目を丸くして、それから苦笑した。
「おう、任せとけ」
「ん、期待しとく」
おそらく、熱い湯に浸かるよりも効果があるにちがいなかった。