086:恍惚
己のこんな表情を見ることはないと思っていた。だいたい男に抱かれてよがること自体、想像だにしていなかったのだから。
ビデオの中の自分は虚ろなひとみを潤ませて終始ちいさく声をあげていた。ごつく節くれ立った手のひらが、汗ばんだ肌に触れるたびに、愛撫するたびに。恍惚とした表情が見え隠れする。
あの手は自分もよく知っている。あれを見ているとからだの奥が無条件にうずいてくるのだ。
かたわらにいる近藤の顔を覗きこんでみると、どうやらビデオに夢中になっているらしい。釘付けになっている様に土方はむっと唇をとがらせて、近藤さん、呼んでみても「うん」と空返事しかいただけない。
「……近藤さん、ホンモノのほうがよくねェ?」
「え」
下半身に手を添えると、近藤は驚いたように身体を跳ね上げた。一瞬しか触れることはできなかったが、そこはもう硬く勃起しているのがわかった。
ビデオの中の自分にヤキモチを妬くなどお門違いなんだろうけれども。
「俺のが気持ちよく、させてやれるよ」
そうは言っても、すぐに近藤の手の内に落とされてしまうのは目に見えているのだけれど。
06.11.23