頬をやさしく撫でる感触、次いで名を呼ぶ声を聞いて土方は眠りから覚めた。
「――トシ」
「ん……」
瞼を開けると、近藤の姿が視界いっぱいに映りこんでいる。土方はぱちりぱちりといくつか瞬きを繰り返し、それからようやく自分の置かれた状況を把握することができた。
どうやら近藤の帰りを待っているうちに眠ってしまっていたらしい。時計を見やれば、近藤が帰ると告げていた時刻をわずかに過ぎていた。
あわてて身体を起こす土方の背中を、支えるように近藤が手のひらを添えた。
「寝るならベッドで」
「いい」
土方はかぶりを振った。それでも眠気を忍ばせることは難しく、ふわ、とちいさくあくびを漏らすと近藤が眉をしかめた。眠いのなら寝ればいいのに。
そんな声がいまにも聞こえてきそうで、近藤が口を開くよりも先にさっさと立ち上がってしまう。
「俺はアンタを待ってたんだ」
言うなり、腹の虫が鳴った。そういえば、帰宅してから何も口にしていない。
それにしてもなんていいタイミングだったのだろう! 気まずさに目を伏せると、近藤が額に接吻けてきた。
「ただいま」
一緒になんか食おうか。笑う近藤に土方はくちびるを尖らせながら頷いた。
「おかえり、近藤さん」