黴で黒ずんだ床下がぎしぎしと軋んでいる。先刻まで室内はその黴臭さで充満していたが、今では精液の生臭さと混じってもうどうでもよくなってしまった。
身体の下に敷いた隊服の上着は突かれるたびに皺を増やし、徐々に湿り気を帯びていく。じわじわと肌の上をすべる汗が重力を逆らうことなく布に浸り、姿を消した。
これは帰ったらしっかり洗わなければならない。自分のものよりも一回りほど大きいサイズのそれに若干の申し訳なさを感じながら、土方はその隊服の持ち主にしがみつき、またよがった。
服を脱ぎ去ったばかりのときは、冷え冷えとした空気が肌に突き刺し寒さに粟立っていたが、今では熱く燃えるような感覚に全身を包まれていた。
男の形に広がった後孔は今や痛みを感じなくなり、抜き差しするペニスをきつく絞めつける。覆いかぶさる近藤の、荒い息が顔の横で激しさを増して終わりの近いことを予感させた。
土方も荒く胸板を上下させ、近藤の背中にまわしていた腕をそうっと下ろし、代わりに近藤の頬に手をあてる。眉をしかめ、常よりも精悍さを刻んだ表情が土方を捕らえた。
セックスの際、己の名を呼ぶ声色はまた格別だと土方はしみじみ思う。
むろん情事中にそんなことを考える余裕などほとんどないから、のちに情交を振り返ったときに生々しいほど彼の低くかすれた声を思い出してしまい、己の想像力に脱帽、また畏れながら自慰をすることも少なくはなかった。
耳元に注がれる声色とともに、体内に熱く迸るものを感じたのを最後に土方の意識は薄れていった。次に会うのは近藤の気遣わしい瞳とやさしさに満ちた声色だろうか。それともまだ欲望の色濃く残った男の声か。
――どちらでも構わない。ただ目を覚ましたときにふたたび己の名を呼んでくれたらと、そこまで思考を泳がせた土方はついに意識を手放した。