071:ハイリスク
*** 「64:地下室のつづき」のつづき

「なァ近藤さん、一緒に行ってほしいところ、あるんだけど」
 見廻りの最中、道端でふと昨日のことを思い出した土方は、近藤の服の裾を引っ張り、こっそり耳元で囁いた。
「行ってほしいところォ?」
「シィー!」
 声を張り上げる近藤の口許をあわてて手のひらで覆い、深く頷いてみせた。
 周りにはばらばらと隊士がいる。ほかの者にはけっして聞かれたくはない。
「今から」
 そっと声を忍ばせて言うと、近藤は怪訝そうに眉をしかめる。
「今?」
「そう」
 だからちょっとだけ抜け出さないかとねだってみたが、近藤は縦に首を振らずに「またあとでな」とちいさく笑っただけだった。
「近藤さん」
「仕事終わってから、ゆっくり行こう」
 かたくなな近藤の応えに土方はつまらなさそうに唇をとがらせた。


06.11.04