065:感触
目許や頬、額に唇といった場所に息つく間もなく接吻けられる。きつく唇を引き結んでいた土方は、そのやさしい愛撫に次第に身体の力が抜けていってしまうのを感じた。
「……近藤さん」
確かめるように、名を呼べばすぐにうん、返事があって安堵したように息を吐き出す。土方は覚束ない腕を持ち上げて、己に接吻けを降らす男の頬に手のひらをすべらせた。
その感触はよく知っているものだったので、繰り返し安堵はしたもののそれでも手を離そうとはしなかった。
いま土方の両目は布で覆われていた。けっしてきつくはない結び目が後頭部でくくられている感覚がある。
視界を塞がれているだけで、常よりも何倍に敏感になったようだ。
接吻けひとつにしろ、どこか一点を触れられるたびにぴくりと肌を戦慄かせて、そんな自分に土方ははじめのうち失笑すら漏らしていたが、いまではもうまともに呼吸をすることすら困難な状況であった。
次にどこが触れられるのだろうかという期待と、不安。ない交ぜになる感情に溺れていく。
――はたしてこのひとは本当に近藤なのだろうか。
ふと、土方は思い、突拍子もない馬鹿げた思案にしかし恐怖で身を縮こまらせた。
土方はもう一度繰り返し彼の名を呼んだ。しかし返事はなく、ただ肌にすっかりしみついた感触が土方をやさしく包み込んでいるだけだったので、彼の存在を確かめるためにそれにすがるしかなかった。
06.11.07