064:地下室
 あ、と思った瞬間には足場が消えていた。
 板張りの床はばりばりと耳障りな音をたてて裂け、その部屋に足を踏み入れた者を瞬時に地下へと追いやったのだ。
「畜生、こんな地下室があるなんて聞いてねえぞ」
 尻を床にしたたか打ちつけた土方はうめき、盛大に舌打ちした。頭上から降り注ぐ木の破片を払いながら辺りを見回す。 暗くて視界はあまり利かないが、しばらくひとの出入りがないことはこの廃屋に足を踏み入れたときからわかっていた。
 積もりに積もっているだろう埃の匂いに辟易しながら、ふうんと静かに鼻を鳴らす。
「いいかも、ここ」
 今度はあのひとを誘ってこようかと、土方は痛みを忘れて思わずほくそ笑んだ。


06.11.04