054:しなやかな腕
 包帯を巻きつけたそばから血が滲みだしてくる。白い布がじわりじわりと赤く染まっていくのを見て焦ったのは、負傷した近藤自身ではなくその光景を目の当たりにした土方であった。
 痛くないかと尋ねると痛くないよと不器用に笑んでみせるから、土方はくちびるを噛みしめていま自分ができること――刀傷のできた近藤を手当てすることしかできやしない――に集中すべくそのしなやかな腕をとりぐるぐると包帯を巻いていく。
 ああこのまま血が止まらなかったらどうしようと気を揉んでいると、ぽつりとつぶやく近藤の声が耳に入ってくる。
「はやくおまえを抱きたいな」
 ひとりごとのようなそれに土方が顔を上げると、近藤はじっと土方のほうを見つめていたようで思いのほか近くで目が合ってしまった。土方は眼球を揺らしてふたたび赤く滲んだそこに睨みつけるみたいにして視線をやった。
「じゃあはやく治せよ」
 ぶっきらぼうに言って、包帯の上から近藤の腕をそうっと撫でた。
「おれもはやくアンタに抱かれたいんだ」


06.10.08