052:きまぐれ
「イヤだ……」
 近づいてくる唇を避けるように土方はふいとそっぽを向いた。と同時に腰に添えられた両腕も振りほどいてしまう。そうして一歩後退して、そっと近藤の顔を見上げてみる。
 わずかに期待を含ませた土方の瞳には、近藤は気づいていないように「そうか」とだけ呟いて、彼もまた一歩下がり、土方から遠ざかってしまう。
 土方はあわてて、近藤の服の裾を握りしめた。それから絶句する。
 近藤が、口許を緩ませて笑いをこらえているふうだったので。


06.10.08