045:カナリア
隣にぬくもりを感じながら朝の目覚めを迎えるのはなんて幸せなことなんだろう。
明け方、だいぶ涼しくなってきた早秋を感じながら土方はうっとりと思った。
しっかりと肩まで布団をかぶっていたのだけれどそれでは少し暑かったので、腹の辺りまでめくってしまった。
隣で眠る近藤はといえばとうに掛け布団の世話にはなっていなかったので、とりあえず自分と同じようにお腹の部分にだけかけてやった。
そうしてまたまじまじと近藤の顔を見つめていたところで、その瞳がゆっくりと開いて土方を捉えた。
土方が「おはよう」と言うと近藤もつられるように「おはよう」と言った。寝起きの掠れた声で、土方はそれが特別好きだった。
近藤は大きなあくびを隠そうともせずに零してから、障子の薄い膜から侵入してくるきらきらと輝く朝日に眩しそうに目をしばたかせた。
「……なんか、鳥の鳴き声がする」
近藤に言われて土方も気がついた。外から何やら鳥のさえずりが聞こえてきていた。
「カナリアじゃねえの」
土方は適当に答えた。鳥の種類なんか知らなかったので、とりあえず思い浮かんだものを答えてみたのだった。
「そうかァ、きれいな声だなー」
寝ぼけ眼で近藤がそう呟くのを聞いて、土方は内心おもしろくなかった。確かにきれいなさえずりだったが、それが近藤の意識を奪っているということが許せなかったのだ。
「近藤さん」
「んん?」
土方はむくりと起き上がり、まだ半分眠っている様子の近藤の身体にまたがった。
「俺のほうが、もっとイイ声で啼ける」
婀娜のある笑みを口許に浮かべて近藤の耳元で囁いた。不意打ちを食らわせてやったつもりだったが、逆に動揺させられたのは土方のほうだった。
「知ってる」
そう含み笑いをして髪の毛をくしゃりと撫でてくる近藤に、土方は思わず顔を赤らめてしまいそうになって唇を噛みしめた。
06.09.11