微笑んだ土方の双眸に茶化した色はなく、その真摯さを突きつけられた近藤は思わず喉奥でうなり声をあげた。
確かにいまは金欠で(昨晩キャバクラで豪遊したことを、はたして土方は知っているのだろうか)、賭け事の賞品はといったらある程度妥協していっても自身しかないだろうが、それはそれ。
「やんない」
端的に断ると土方は目を細め、「なんで」とかすれた声でつぶやいた。断られるとは思っていなかったようで、納得いかないのか「どうしてだよ」と再度つぶやく。
「だって、馬鹿げてる」
「やだ」
「我が儘を言うな」
苦笑を滲ませ土方の頭を撫でると、土方はそれを乱暴に払いのけた。そんな荒々しい振る舞いをされたのははじめてのことだったので、近藤は払われた手を宙に浮かせたまま、目を丸くした。
土方はうつむいて、肩を震わせている。
「……俺は、アンタのそういう行動に、我慢ならねえんだ」
つまり厭だったのか、近藤は少なからずショックを受けて、土方に触れ、払われた手をぎゅっと力強く握りしめた。顔を上げずにいる土方に一瞥をくれ、ちいさくため息を落とす。そうして無言のまま立ち上がり、部屋を出た。
ずきりずきりと痛むのは、払われた手だけではなかったのだが、そのことに近藤は、気づくことはなかった。
「……だって、どうすれば、アンタを手に入れられるんだ」
そうして、土方が苦々しく吐き出した言葉も、本音を隠して賭け事に乗じた報いか、ついには近藤の耳に届くことは、なかった。