雨が降っていた。さらさらと、静かに降り続く雨の微かな音で、近藤は目を覚ました。
ひんやりとした空気は早朝特有のもので、いつもはまだぐずぐずと暖かい布団の中にいたいと思うのだろうが、今日は違った。
隣にいるはずの土方がいないことに気づき、近藤は上半身を起こした。ちょうどそれを見計らったかのように、障子が開いて土方が顔を覗かせた。
「起きた、」
「早起きだな、トシは」
土方は口許を綻ばせた。
「雨、降ってる」
後ろを振り返り、外を眺める土方に、彼が見ていないにもかかわらず、近藤は深く頷いてみせた。
「散歩、行こっか」
「雨降ってるンだって」
「だから、傘ってモンがあるんだろう」
瞠目した土方は、しかしすぐに肩を揺らして笑いだした。どうやら、近藤の我が儘はきいてもらえるらしい。
そう捉えることにして、早速出かける準備をするべく、布団から抜け出した。しかし、土方は障子に軽く寄りかかったまま、動こうとはしない。
「……身体、つらくないか?」
「そんなこと訊くな、ばか」
しかめ面をして見せた土方の頬は、しかしほんのり朱色に染まっている。思わず、近藤もつられるように赤くなってしまった。
それを見た土方は呆れたふうに苦笑して、さり気なく近藤から視線を逸らし、呟いた。
「……それで、時間は間に合うの、」
「……ああ」
「じゃあ早く、行こう」
言い残して、土方は部屋を出て行ってしまった。それをぼんやりと見送った近藤は、あたふたと布団を畳みはじめた。
わずかに開いた障子の隙間から、灰色の空から降り注ぐ冷たい雨が、やけに辛辣に視界に留まった。