027:BGM
*** 3Z

「トシくん、俺はね、音楽がないと勉強が手につかねェんだよ」
「初耳だな、そりゃ」
 至極真面目な顔をして偽りに満ちた言葉を言い放つ近藤を、土方はしかしどこ吹く風と聞き流した。 そんな土方の対応にもめげずに――もしくは単に気づいていないのか(おそらく後者だ)、近藤はわずかに前のめりになって言葉を続けた。
「アレー、言ってなかったッけ?」
「聞いてねーよ」
 それにアンタ普段からそんなに音楽なんて聴かねえだろうが。 なんて呆れてため息を零しながら、眼前の近藤の顔を手のひらで押しやった。近すぎなんだよばか。
 近藤の目の前にはほとんど手つかずのままの課題プリントが広げられている。これが終わらないと帰れないのだ。 しかし近藤はそれすら意に介していないように、ううん、とひとり何やら別の考え事をしている。
 まったくこのひとは、ともうひとつため息を落とした土方に、近藤がにっこりと笑いかける。
「じゃあトシくん歌ってよ」
「じゃあってなんだよ、じゃあって。だったらソレさっさと終わらせてカラオケでも、」
「それとも……」
 土方はあやうく椅子から引っ繰り返りそうになった。 突然がたりと音をたてて立ち上がった近藤が、身をかがめて耳元にひそやかに囁いたので。
「俺がたっぷり啼かせてあげよォか」


06.07.25