026:セミダブルベッド
「シャワー、浴びてくるか?」
 降り注いできた言葉に、土方は虚ろにさせていた双眸を斜め上に向けた。そちらには近藤が、心配そうな瞳で自分を見下ろしてきていた。
「……いい、」
 ゆるりとかぶりを振った土方は額を枕に押しつけて、その下に両腕を差し込んだ。 そうして瞼を閉じて、身体に沈殿する心地好さを感じたまま、眠ってしまおうとする。
 トシ、と咎めるような、聞き分けのない子どもを宥めるような、そんな柔らかい叱責が続いたけれど、土方は意も介さずシーツの波に肢体を預ける。
「アンタが悪いンだぜ」
 淀みのない、流れる口調で言う。 しかしその声量はわずかなものだったので、聞き損じたらしい近藤が、「うん?」とこちらに身をかがめたのが気配でわかった。
「一晩中ヤるなんて、聞いてない」
 今度ははっきりと、告げてやる。言外には無論、だから動けないんだという意味をほのめかして。
 チラと近藤を見やればその顔は赤らみ、さらには引きつっていて、弁解でもしたいのか金魚のように口をぱくぱくとさせていた。
 土方は身体の脇に置かれた太い腕をつかみ取って、その精巧な筋肉に接吻けた。
「ひとりで寝るにはこのベッド、広すぎなんだ。アンタも早く、寝ようぜ」
 なんだったらもう一回、してもいいけど。 色を含んだ呟きを落とすと同時に、セミダブルベッドがギシリ、限界を告げるみたいな悲鳴を上げたと思ったら布団の中に近藤が背を向けて潜り込んできたので、土方はつまらなさそうに鼻を鳴らした。


06.07.01