熱のせいでまっすぐ歩くことすらままならない。先刻計ったときは、確か37.8度まで上がっていたはずだ。
厠の前までなんとか辿り着いたものの、限界だったのかふらり、壁に手をついて身体を支えた。ぐらぐらと視界が回る。
うっすらと瞼を閉じて深呼吸をしたところで、不意に肩をぽんと叩くものがあった。
「トシ、大丈夫か」
振り向くのも億劫でそのままでいると、耳慣れた声が己を気遣う。
「……近藤、さん、」
ゆっくりと首を後方へと巡らして、その声の主の顔を見上げると、近藤が懸念に眉をひそめていた。
「へいき、」
「っていっても、歩けないンだろ?」
「ちょっと休憩、してるだけだ」
「バカ野郎」
俺を頼れと近藤は言う。だってまさか、こんなこと言えるわけねえじゃねーか……。
部屋に戻るぞと腰をつかむ太い腕を、土方はやんわりとつかむ。
いらない、静かに頭を振って辞退すると、この場がどこであるのか思い出したように、近藤はひとり頷いた。
「じゃあ俺が連れてってやる」
「は、」
有無を言わさず、離れることのなかった腕に引き寄せられて、ずんずんと厠の中へと連れ立たれる。
「ちょ、近藤さ、」
「さあ、思う存分しろ!」
数個並んだ便器のうちのひとつを指され、面食らうのも仕方のないことだろう。
「しろ、って」
「どうした?」
「あ、アンタがいたらできねえよ……!」
悲願にも似た一蹴をすると、近藤はにやりと意地の悪い笑みを見せた。
「俺が、手伝ってやろーか」
「……な、」
何を言ってンだ、アンタは。
熱のために赤らんでいた頬を一瞬青褪めさせて、土方は顔を引きつらせた。
「ふ、ふざけんな、出てけ出てけ出てけ!」
「なんだよ、ありがたく思えー」
「思えるわけねえだろうがッ! って、アッ」
不意に伸ばされた近藤の腕が、するりと寝衣の狭間に入り込んでくる。
土方は身をよじらせたけれど、身体が思うように動かないので抵抗にはならない。
「う、ん……ッ」
内に潜んでいたペニスをつかまれ、すぐさまそれを眼下に晒された。
羞恥心で土方の目許は熱くなるが、元より顔を火照らせていたので明るみには出なかった。
「あ、あ、……」
緩やかに扱かれ、ぽたりと力なく落ち込んでいたペニスもやがて反応を見せていく。
土方はゆるゆると頭を振った。こめかみから垂れた汗が頬を伝う。これでは話が違う。
言ってやりたいが、しかし声にはならない。荒く息を乱しながら近藤の鎖骨に額を押しつけた。
「やばい、って、近藤、さん」
否応なしにこみ上げてくる、射精感。しかしそれ以前より我慢していた尿意もまた土方を襲っていた。
「いいよ、出して」
どちらのことを指しているのか。おそらくそのどちらもだろう。
穏やかな声に促されるように、土方はきつく瞼を閉ざし、奥歯を噛み締めた。
「……最悪」
「何がァ? すっきりしただろ」
「誰がするか……」
近藤に負ぶさりながら自室へと向かう。未だ眩暈が続いているのは、熱のせいだけではないはずだ。
「畜生……」
独りごちた土方は妙案を思いつき、近藤の耳朶を引っ張った。
「アンタが熱出したときは、俺がしーっかり世話してやるからな」
もちろん下の世話もな! 言うなり近藤の「遠慮します……」という逃げ腰の言葉を耳に入れて、土方は近藤の耳に噛みついてやった。