019:photograph
「トーシー!」
「……」
「トシトシトーシ!」
背後からうるさいほど呼びかけてくる声に、しかし土方はぴくりとも振り返ることはなかった。
それ故さらに繰り返される己の名に、深くため息を落とす。
仕方ねェ、不本意ながらも心を決めて(いい加減、これ以上無視しているのも己が辛かったので)、顔をわずかに後方へと向ける。
途端にぱしゃり、響くのはシャッター音。瞬く閃光に、迷惑そうに瞬きをする。
「いきなり撮ンな」
「だってトシ、撮らせてくんないんだもん」
つまらなさそうに唇を尖らせるのは、カメラ片手の近藤だ。
彼は今、隊士のひとりが新しく買ったという、一眼レフのカメラで意気揚々と土方を定め狙っていた。
まるで写真家気取りの近藤に、土方は呆れるしかなかった。
「魂吸い取られるだろ」
「おまえなあ……」
時代錯誤も甚だしいぞ。呟く近藤の手から、するりとカメラを奪い取る。思いのほか軽量だったそのレンズを、逆に近藤に向けてやる。
「俺が撮ってやる」
「……魂、吸い取られる」
土方はくすりと笑った。
「大丈夫、俺が全部受け取ってやるから」
06.06.27