014:気付かないフリ
 気づかないフリをしているのも限界がある。
 さわ、と腰に触れる手のひらのぬくもりに、耐え切れずくすりと喉を鳴らして笑ってしまえば、耳元で「やっぱり起きてた」と低く楽しげに囁かれた。
 土方は背後から回された太い腕をやんわりとつねった。くるりと首をひねって後ろを見やると、嬉しそうに細められた双眸が視界に入る。
「……アンタな、ひとが寝てンのに邪魔してくんじゃねェよ」
「狸寝入りしてるヤツに言われたくねーぞ」
「セ・ク・ハ・ラ!」
 体勢を元に戻し、見えないところで顔をしかめる。そうでもしないと、笑い出してしまうことは必須だったので。
「トシは感じやすいからなァ」
 ぽつり、呟かれた言葉に土方は小さく肩を震わせた。


06.06.22